「ニホニウムとはどんな元素?」「日本が発見した113番元素といわれるけれど、何がすごいの?」と気になっている方もいるのではないでしょうか。
周期表や原子番号と聞くと少し難しそうですが、ニホニウムは日本の研究グループが発見を認められ、名前を提案した元素として知られています。
原子番号113、元素記号はNhで、自然界から大量に見つかるものではなく、研究施設でごくわずかに作り出される人工元素です。
この記事では、ニホニウムの基本的な特徴から、理化学研究所による発見、名前の由来、現在も続く新元素探索まで、初めて読む方にもわかりやすくご紹介します!
日本の科学史に残る発見が、どのような長年の研究によって実現したのかを一緒に見ていきましょう。

ポイント
- ニホニウムの原子番号・元素記号・周期表での位置
- 理化学研究所の研究グループが113番元素を発見した経緯
- ニホニウムという名前の由来と命名が持つ意味
- ニホニウムの性質や用途の研究、119番以降の新元素探索
ニホニウムとは日本が発見した原子番号113の人工元素

ニホニウムとは、原子番号113の人工元素で、元素記号は「Nh」です。
自然界でまとまって見つかる元素ではなく、研究施設で原子核を衝突させることにより、ごくわずかに作り出されます。
周期表では第7周期・第13族に分類される、超重元素の一つとして知られています。
「日本が発見した113番元素」と聞くと少し難しく感じるかもしれませんが、まずは元素の住所ともいえる原子番号や周期表での位置を押さえると、ニホニウムの基本がつかみやすくなります!
| 項目 | ニホニウムの基本情報 |
|---|---|
| 元素名 | ニホニウム |
| 元素記号 | Nh |
| 原子番号 | 113 |
| 分類 | 人工元素・超重元素 |
| 周期表での位置 | 第7周期・第13族 |
元素記号はNhで原子番号は113
ニホニウムの元素記号はNhで、最初の「N」は大文字、次の「h」は小文字で表記します。
元素記号は、世界中の研究者が同じ元素を共通して表すための短い記号です。
たとえば酸素はO、金はAuと表され、ニホニウムはNhと書かれます。
原子番号113という数字は、その原子の中心にある原子核に、陽子が113個あることを示しています。
原子番号は元素を区別するための基本となる番号で、陽子の数が異なれば別の元素です。
つまり、陽子を113個もつ原子はニホニウムであり、112個なら別の元素、114個でも別の元素として扱われます。
周期表は原子番号の順に元素を並べた表なので、ニホニウムは113番目の位置に載っています。
元素記号と原子番号をセットで覚えると、資料や図表を見たときにも「Nhは113番の元素」とすぐに確認しやすくなります。
自然界では確認されておらず人工的に合成された元素
ニホニウムは、地球上の鉱物や空気、海水などから採取される元素ではありません。
自然界では確認されておらず、大型の加速器などを使う研究によって人工的に合成された元素です。
人工元素とは、人の手で原子核どうしをぶつけ、新しい原子核ができる条件を整えて作られる元素を指します。
これは、工場で製品を大量に作るような方法とは異なります。
研究では非常に小さな世界で起こる反応を扱うため、ニホニウムを目で見える量まで集めたり、身近な材料として使ったりすることは簡単ではありません。
そのため、ニホニウムは日用品やアクセサリーの素材として知られる金属とは、成り立ちも扱われ方も大きく異なります。
人工的に作られた元素であっても、原子番号や元素記号が定められ、周期表の中で一つの元素として位置づけられます。
「人工」という言葉から特別な物質を想像しがちですが、ニホニウムも原子の構造によって区別される元素の仲間なのです。
周期表では第7周期・第13族に位置する超重元素
ニホニウムは周期表の第7周期・第13族に位置しています。
周期表の横の並びは「周期」、縦の並びは「族」と呼ばれます。
第7周期は、現在の周期表では下から1段目にあたる最も長い横の列です。
また第13族には、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムなどが並んでいます。
ニホニウムはこれらと同じ縦の列に置かれるため、元素どうしの関係を考える際に第13族の仲間として扱われます。
ただし、同じ族に属するからといって、すべての性質が身近な元素と同じになるわけではありません。
ニホニウムは原子番号が大きく、原子核に多くの陽子をもつ超重元素です。
超重元素は、原子番号が大きい元素群を理解するうえで重要な存在であり、周期表がどこまで広がるのかを考える手がかりにもなります。
ニホニウムは、周期表の端に近い場所に新たに加わった元素として、基礎科学の世界で注目されています。
ニホニウムを発見したのは理化学研究所の研究グループ
ニホニウムを発見したのは、理化学研究所の森田浩介氏を中心とする研究グループです。
研究グループは加速器を使った長年の実験を重ね、2004年から2012年にかけて原子番号113の原子を計3個観測しました。
目に見えないほど小さく、短い時間しか存在しない原子をとらえる研究には、高度な装置と粘り強い検証が欠かせません。
森田浩介氏を中心とする研究グループが探索
ニホニウムの探索を進めたのは、理化学研究所の仁科加速器科学研究センターで研究を行っていた森田浩介氏を中心とするグループです。
森田氏は原子核物理学を専門とし、新しい元素をつくる実験に長く取り組んできました。
新元素の探索では、ただ強い力で原子をぶつければよいわけではありません。
狙った原子核どうしが出会う確率は非常に低いため、加速する粒子の種類や速度、標的にする物質の状態などを細かく整える必要があります。
さらに、実験中にはさまざまな粒子や信号が生じるため、目的の原子に関係するわずかな記録を見分ける工夫も求められます。
こうした難しい条件を一つずつ積み重ねたことが、113番元素の観測につながりました。
発見は一人だけの成果ではなく、加速器の運転、装置の開発、データの確認を担う多くの研究者や技術者の協力によって支えられています。
亜鉛イオンとビスマスからニホニウム278を合成
研究グループは、亜鉛の原子から電子を取り除いた亜鉛イオンを加速し、ビスマスの標的に当てる方法を選びました。
亜鉛の原子番号は30、ビスマスの原子番号は83なので、両者の原子核がうまく結び付くと、合計が113になります。
| 用いたもの | 原子番号 | 実験での役割 |
|---|---|---|
| 亜鉛イオン | 30 | 加速してビスマスへ当てる粒子 |
| ビスマス | 83 | 薄い膜状にして用いる標的 |
| 生成を目指す原子核 | 113 | ニホニウム278 |
実験では、亜鉛70とビスマス209を組み合わせ、原子番号113、質量数278のニホニウム278をつくることを目指しました。
質量数とは、原子核にある陽子と中性子の数を合わせた値です。
原子核が結び付く際には中性子が1個放出されるため、70と209を足した279ではなく、278という質量数になります。
とはいえ、衝突した亜鉛イオンのすべてがニホニウムになるわけではありません。
ほとんどの場合は目的の原子核ができないため、ごくまれに現れる生成の記録を逃さない測定が大切になります。
2004年・2005年・2012年に計3個の原子を観測
理化学研究所の研究グループは、2004年、2005年、2012年の実験で、ニホニウム278にあたる原子をそれぞれ1個ずつ観測しました。
合計すると、観測された原子はわずか3個です。
身近な物質なら大量に集めて調べられますが、新元素の探索では、たった1個の原子が得られること自体が大きな成果になります。
- 2004年:最初の原子を観測しました。
- 2005年:2個目の原子を観測しました。
- 2012年:3個目の原子を観測しました。
3回にわたる観測結果がそろったことで、研究グループは得られた記録をより丁寧に比較できるようになりました。
新元素の研究では、偶然の記録ではないことを慎重に確かめる姿勢が特に重要です。
ニホニウムの観測は、日本の研究チームが世界的な新元素研究の最前線で積み上げた成果として、多くの人に知られるようになりました。
崩壊の連鎖をたどって113番元素と確認

ニホニウムが原子番号113の新元素だと確かめるには、直接その姿を見るだけでなく、生まれた原子核がどのように変化していくかを追う必要がありました。
理化学研究所の研究グループは、ニホニウムが続けて起こすアルファ崩壊の連鎖を記録し、その先にすでに知られている原子核が現れることを確認しました。
短時間で別の原子核へ変わるアルファ崩壊を追跡
ニホニウムのように原子核が非常に重い元素は、つくられたあと長くそのままではいられず、短い時間で別の原子核へ変化します。
この変化のひとつが、原子核からヘリウム原子核と同じ構成の粒子が飛び出すアルファ崩壊です。
アルファ崩壊が起こると、原子番号は2つ小さくなり、質量数は4小さくなります。
つまり、原子番号113のニホニウムがアルファ崩壊すると、原子番号111の別の元素の原子核へと変わります。
さらに崩壊が続けば、109、107、105というように、原子番号が2ずつ小さい原子核が順番に生まれます。
| 変化の前後 | 原子番号の変化 | 質量数の変化 |
|---|---|---|
| アルファ崩壊の前 | ― | ― |
| アルファ崩壊の後 | 2小さくなる | 4小さくなる |
測定装置では、飛び出したアルファ粒子のエネルギーと、崩壊までにかかった時間を記録します。
それぞれの原子核には崩壊のしかたに特徴があるため、記録をつなげることで「どの原子核が順に生まれたのか」を判断する手がかりになります。
目に見えないほど小さな世界の出来事ですが、崩壊の順序そのものが原子核の身元を示す記録になるのです。
既知の原子核につながる崩壊経路が重要な証拠
新しくつくられた原子核だけを見て、それが113番元素だと決めることは簡単ではありません。
そこで重要になるのが、崩壊が進んだ先に、性質がすでに調べられている原子核が現れることです。
ニホニウム278では、アルファ崩壊を重ねた結果、最終的に既知のメンデレビウム254へつながる経路が確認されました。
このつながりによって、途中に現れた原子核を逆向きにたどり、出発点が原子番号113の原子核だったことをより確かに判断できました。
- 最初に観測された原子核からアルファ粒子が放出されます。
- 原子番号が2小さい原子核が生まれ、同じように崩壊を続けます。
- 崩壊の回数、粒子のエネルギー、時間の記録を順番に照らし合わせます。
- 最後に既知の原子核へつながることで、連鎖全体の信頼性を確かめます。
特に2012年の観測では、この既知の原子核へ至る崩壊経路が得られたことが大きな意味を持ちました。
単に「見慣れない信号が出た」という段階ではなく、既知の原子核まで途切れずにつながる記録が残ったためです。
わずか3個でも発見が認められた理由
ニホニウムの観測数は3個でしたが、新元素の確認では数の多さだけが判断材料になるわけではありません。
ごく少ない観測であっても、複数回の実験で似た崩壊の記録が得られ、しかも既知の原子核へつながるなら、重要な根拠になります。
ニホニウムの場合は、別の時期に行われた観測結果を比較し、崩壊のエネルギーや時間に一貫性があるかを丁寧に確認しました。
さらに、観測された信号が目的の原子核の崩壊として自然に説明できるかどうかも検討されました。
- 同じ種類の崩壊の連鎖が繰り返し観測されていること。
- 各段階で得られたエネルギーと時間の記録に整合性があること。
- 崩壊の先に既知の原子核が確認できること。
- ほかの現象として説明しにくい記録であること。
このように、1個ごとの原子から得られる情報の質を積み重ねたことが、発見を支える力になりました。
正式認定まで約10年を要した背景
最初の観測から発見として認められるまでには、約10年という長い時間がかかりました。
これは研究が進まなかったからではなく、新元素の発見にはだれが見ても納得できるほど慎重な確認が求められるためです。
ニホニウムは非常につくられにくく、同じ条件で何度も観測するだけでも時間が必要でした。
また、初期の記録だけでは崩壊の終点まで十分にたどれない部分があり、既知の原子核へつながる追加の証拠が待たれました。
2012年の観測で崩壊経路の裏付けが強まり、それまでの記録と合わせて評価できるようになりました。
新元素の研究では、早さよりも確かさが大切です。
ニホニウムの確認に時間がかかったことは、見えないほど小さな原子核を、確かな証拠で見分ける難しさを物語っています。
国際的な検証を経て日本の発見が正式に認定
ニホニウムの発見は、理化学研究所の観測結果が国際的に詳しく検討されたうえで、2015年に日本の研究グループの成果として正式に認定されました。
新元素の発見は、一つの研究チームだけで決められるものではなく、海外の研究成果との比較や専門機関による評価を経て認められます。
この認定によって、理化学研究所の研究グループは113番元素の名前を提案する権利を得ました。
ロシア・米国側の研究グループも113番元素を研究
113番元素をめぐる研究には、日本だけでなく、ロシアと米国の研究グループも関わっていました。
特にロシアのドゥブナにある合同原子核研究所と、米国のローレンス・リバモア国立研究所による共同研究は、新しい重い元素の研究で多くの成果を積み重ねてきました。
各グループは、原子核どうしを衝突させる組み合わせや、得られた原子核を確認する方法を工夫しながら、113番元素につながる現象を調べていました。
同じ113番元素を目指していても、つくり方や観測された崩壊の経路が異なる場合があるため、研究結果は単純に比べられるものではありません。
そこで国際的な評価では、どの実験が113番元素そのものを十分に示しているかが慎重に検討されました。
| 研究グループ | 主な研究の位置づけ |
|---|---|
| 理化学研究所(日本) | 113番元素を直接つくる実験を行い、発見を示す記録を積み重ねた |
| 合同原子核研究所・ローレンス・リバモア国立研究所(ロシア・米国) | より重い元素の研究を通じ、113番元素に関連する崩壊の記録を報告した |
どちらの研究も新元素研究の発展に大切な役割を果たしており、国際機関はそれぞれのデータを丁寧に確認しました。
このように複数の国が研究を進めていたからこそ、発見の認定には明確で納得できる根拠が求められたのです。
2015年に国際機関が理研の発見を認定
2015年12月、国際純正・応用化学連合と国際純粋・応用物理学連合の合同作業部会は、113番元素の発見者として理化学研究所の研究グループを認定しました。
この判断は、研究グループが発表した内容だけを見るのではなく、実験方法、観測記録、ほかの研究との関係などを総合的に確認して行われたものです。
評価で重視されたのは、観測された原子核が113番元素であることを、科学的に十分説明できるかどうかでした。
また、新元素の発見では、後から別の研究者が記録を確認できるよう、データの整理や発表内容の明確さも大切になります。
- 観測結果が113番元素として筋道立てて説明できること
- 得られた記録に一貫性があること
- 既存の研究成果と照らし合わせて確認できること
- 国際的な基準に沿って評価できること
理化学研究所の成果は、これらの観点から検討され、日本の研究グループによる発見として認められました。
日本の研究機関が新元素の発見者として認定されたことは、国内の基礎科学にとって大きな節目といえます。
発見認定によって理研の研究グループが命名権を獲得
新元素の発見が正式に認定されると、発見者にはその元素名を提案する権利が与えられます。
113番元素では、理化学研究所の研究グループがこの権利を得ました。
ただし、発見者が考えた名前がそのまますぐに決まるわけではありません。
提案された名称と元素記号は国際純正・応用化学連合で確認され、一定期間にわたって世界から意見を受け付けたあと、正式な名称として決定されます。
命名までには、次のような流れがあります。
- 発見が国際的に認定される
- 認定された研究グループが名称と元素記号を提案する
- 国際純正・応用化学連合が提案内容を確認する
- 意見募集などの手続きを経て正式に決定される
発見の認定と命名は、どちらも国際的な手続きを大切にする段階です。
理化学研究所が命名権を得たことは、日本で生まれた研究成果を元素の名称として世界に残せる、特別な機会になりました。
ニホニウムの名前は日本を表す「Nihon」に由来

ニホニウムという名前は、日本を意味する「Nihon(ニホン)」に由来しています。
日本で生まれた研究成果を表す名称として提案され、元素名に使われる語尾「-ium」を付けて「nihonium」となりました。
元素記号はNhで、世界共通の周期表にもこの表記が用いられています。
日本にちなんだ名前に込められた思い
ニホニウムの名称には、日本で行われた長年の研究への思いと、基礎科学を次の世代へつなげたいという気持ちが込められています。
「Nihon」は、日本という国を日本語で表す言葉です。
英語での国名である「Japan」ではなく、あえて日本語の読みをもとにしたことで、日本らしさがそのまま伝わる名称になりました。
元素名は世界中の研究者や学習者が使うため、短く、読み書きしやすく、ほかの元素名と区別しやすいことも大切にされます。
nihoniumは、日本とのつながりを示しながら、元素名としても自然な形になるよう考えられた名前です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | nihonium(ニホニウム) |
| 由来 | 日本を表す「Nihon」 |
| 元素記号 | Nh |
| 語尾 | 金属元素の名称で広く使われる「-ium」 |
日本にちなんだ元素名が正式に使われることは、研究に携わった人々だけでなく、科学に親しむ多くの人にとっても印象深いできごとです。
周期表を見るたびに「Nh」という記号から日本を思い浮かべられるのは、ニホニウムならではの魅力といえるでしょう!
ニッポニウムやジャポニウムではなくニホニウムになった背景
日本を表す言葉には「ニホン」「ニッポン」など複数の読み方があるため、なぜ「ニホニウム」が選ばれたのか気になる方もいるかもしれません。
今回採用されたのは、研究グループが提案した「nihonium」というつづりです。
この名称は、「Nihon」に元素名らしい語尾の「-ium」を組み合わせた、わかりやすい形になっています。
「ニッポニウム」に近い名称については、20世紀初めに日本の科学者である小川正孝が「nipponium」という名を提案した歴史があります。
ただし、当時に「nipponium」とされた物質は、のちの研究で別の元素であるレニウムに関係するものと理解されるようになりました。
そのため、今回の113番元素には過去の名称と混同しにくい「nihonium」が選ばれたと考えると、違いをつかみやすいでしょう。
- nihonium:日本語の「Nihon」をもとにした正式名称
- nipponium:過去に提案されたことがある歴史的な名称
- japonium:英語の国名を連想しやすいものの、113番元素の正式名称ではない表現
なお、元素名は響きのよさだけで決まるものではありません。
国際的に使用する際の分かりやすさや、すでにある名称との関係などもふまえて、慎重に整えられます。
ニホニウムという名前は、日本らしさを大切にしつつ、世界の周期表で長く使われることを意識した名称なのです。
2016年に名称「nihonium」と元素記号「Nh」が正式決定
113番元素の名称「nihonium」と元素記号「Nh」は、2016年11月30日に正式決定しました。
これにより、113番元素は仮の呼び方ではなく、世界共通で使われる正式な名前を持つことになりました。
名称はアルファベットでは小文字で「nihonium」と書き、元素記号は先頭だけを大文字にした「Nh」と表します。
元素記号では、大文字と小文字の違いにも意味があるため、「NH」ではなく「Nh」と書く点に注意しましょう。
- 正式名称:nihonium
- 日本語名称:ニホニウム
- 元素記号:Nh
- 原子番号:113
「Nihon」という言葉が由来であることを知ると、周期表のNhがぐっと身近に感じられますね。
ニホニウムは、科学の世界に日本の名前が刻まれた元素として、これからも多くの人に語り継がれていくでしょう。
ニホニウムの命名は日本とアジアにとって画期的な出来事
ニホニウムの命名は、日本の研究グループが新元素の命名権を得た初めての出来事であり、アジアの科学史においても大きな節目となりました。
日本という国名に由来する元素が周期表に加わったことは、長年にわたる研究の積み重ねが世界に認められたことを表しています。
ここでは、ニホニウムがなぜ画期的といわれるのかを、日本とアジアの視点からわかりやすく見ていきましょう。
日本の研究グループが初めて新元素の命名権を獲得
新元素の名前は、発見を認められた研究グループに提案する権利が与えられる仕組みです。
ニホニウムでは、理化学研究所の研究グループがその権利を得たことで、日本の研究機関として初めて新元素の名称を提案できる立場になりました。
これは、単に新しい名前を付けるという意味にとどまりません。
ごく少数しか作れない新元素を見つけ、その存在を示すデータを積み重ね、国際的な基準に沿って評価を受ける必要があるためです。
つまり命名権は、高度な実験技術と継続的な研究体制が認められた結果といえます。
周期表は学校の授業などでも目にする身近な表ですが、そこに日本に由来する名前が加わったことは、多くの人にとって科学をより身近に感じるきっかけにもなりました。
| 項目 | ニホニウムが持つ意味 |
|---|---|
| 日本にとって | 日本の研究グループが初めて命名権を得た新元素 |
| 研究面において | 長期的な基礎研究と実験技術の成果が示された |
| 社会にとって | 科学に親しむ入口となり、次世代の関心にもつながる出来事 |
研究の成果は、すぐに日常生活で使えるものばかりではありません。
それでも、未知の世界を少しずつ明らかにする基礎研究は、科学全体を支える大切な土台です。
アジアの研究グループとしても初めての成果
ニホニウムの命名は、アジアの研究グループとして初めて新元素の命名権を得た成果でもあります。
これまでに命名権を得た研究グループは、主にヨーロッパやアメリカにありました。
その流れの中で日本の研究グループが成果を示したことは、元素研究が特定の地域だけのものではないことを印象づけました。
新元素の研究には、大型の実験設備だけでなく、装置を安定して動かす技術、細かな変化を見逃さない分析、研究者同士の連携が欠かせません。
ニホニウムは、こうした多くの専門性が結び付いて生まれた成果です。
アジアから世界の科学に新たな足跡を残した出来事として、研究に関わる人だけでなく、科学を学ぶ子どもたちにとっても励みになるでしょう。
- 世界の周期表に日本に由来する元素名が加わった
- アジアの研究力が国際的に示された
- 長い時間をかける基礎研究の価値が広く伝わった
「日本で研究されたことが、世界中で共有される知識になる」という点に、ニホニウムの大きな魅力がありますね。
過去の日本人研究者による新元素探索とのつながり
日本ではニホニウムより前から、新元素を求める研究者たちの挑戦が続いてきました。
その歴史を語るうえでよく知られているのが、明治から大正期に活動した化学者の小川正孝です。
小川正孝は鉱物の研究を通じて未知の元素を見いだしたと考え、かつて「ニッポニウム」という名称を提案しました。
当時は元素の確認に必要な方法や国際的な評価の仕組みが現在とは異なっており、その名称が正式に周期表へ載ることはありませんでした。
一方で、後年の研究では、小川正孝が扱った試料には現在のレニウムにあたる元素が含まれていた可能性が指摘されています。
この出来事は、日本の研究者が早い時代から未知の元素に目を向け、粘り強く探究してきたことを伝えるエピソードです。
ニホニウムの成果は突然生まれたものではなく、先人たちの探究心と、時代ごとに発展してきた研究技術の先にある成果と見ることができます。
過去の挑戦を知ると、ニホニウムという名前には日本の科学が歩んできた長い時間も重なっているように感じられます。
ニホニウムの詳しい性質と実用的な用途は研究段階

ニホニウムは発見が確認された元素ですが、詳しい性質や実用的な用途は、まだ研究の途中です。
ごく短い時間しか存在せず、一度に作れる量も原子数個ほどに限られるため、身近な材料のように成分を集めて調べることが難しいからです。
現在の研究では、限られた観測結果と物理学・化学の理論を組み合わせながら、「どのような性質を持つ元素なのか」を少しずつ明らかにしようとしています。
寿命が短く一度に作れる量もごくわずか
ニホニウムは自然界にまとまった量が存在する元素ではなく、加速器を使った実験で人工的につくられます。
つくられるニホニウムは、実験条件によって異なる種類の原子核を持ちますが、存在できる時間は非常に短いことが特徴です。
比較的長く観測される種類でも寿命は秒単位とされ、長期間保存したり、容器にためたりすることはできません。
また、一度の実験で得られる数もきわめて少なく、原子が1個生まれたことを確認するために長い観測時間が必要になる場合があります。
| 調べにくい理由 | ニホニウムで起こること |
|---|---|
| 作れる量 | 原子数個ほどの観測になることがある。 |
| 存在する時間 | 短時間で別の元素へ変化する。 |
| 実験の回数 | 同じ条件で何度も確かめるために時間がかかる。 |
たとえば鉄や金のように、目で見える量を用意して重さや色、硬さを調べる方法は、ニホニウムにはそのまま使えません。
研究者は、原子が生まれた瞬間に現れる信号や、その後に起こる変化を高精度の装置で記録し、性質を推定していきます。
化学的性質は理論予測と限られた実験から研究
ニホニウムは周期表では13族に位置し、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムと同じグループに分類されます。
このため、性質にもタリウムなどと共通する部分があるのではないかと考えられています。
ただし、ニホニウムは原子番号が大きく、原子の中の電子が受ける影響も小さくありません。
そのため、周期表で近い元素と単純に同じ振る舞いをするとは限らず、重い元素ならではの違いが現れる可能性も研究されています。
現在は、計算による予測に加えて、原子が特定の表面にどの程度付きやすいかといった、ごく限られた化学実験の方法が検討されています。
- どのような化合物をつくる可能性があるか。
- 金属らしい性質をどの程度示すか。
- 同じ13族の元素とどこが似ていて、どこが異なるか。
- 電子の振る舞いが化学反応にどう関わるか。
こうした研究はすぐに生活へ役立てるためだけではなく、原子や元素の性質を理解するうえで大切な基礎研究です。
観測できる原子が少ないからこそ、実験結果を慎重に確かめ、理論との一致や違いを丁寧に見ていく必要があります。
現在は身近な製品などに利用できる段階ではない
ニホニウムは、アクセサリー、化粧品、家電製品、医療機器などに使われている元素ではありません。
理由は、必要な量を安定して用意できないことに加え、短時間で変化してしまうためです。
また、人工的につくるための設備や研究環境も必要になるため、一般的な工業材料として扱う段階には至っていません。
ニホニウムの現在の価値は、製品の材料としての便利さではなく、未知の元素の世界を広げる研究対象である点にあります。
研究が進めば、重い元素に共通する性質や、原子核がどこまで存在できるのかといった疑問への理解が深まることが期待されます。
今は「すぐ使える元素」ではなく、科学の新しい知識を生み出すために大切な元素として見守られているのですね!
日本では119番以降の新元素探索も進行
日本では、ニホニウムの次にあたる原子番号119番以降の新元素を目指す研究も進められています。
まだ新元素として確認されたわけではありませんが、より重い原子核をつくる挑戦は、周期表の先に広がる未知の世界を知るための大切な研究です!
119番元素が見つかれば、周期表に新しい行が加わる可能性もあり、世界中の研究者が注目しています。
より重い元素の合成を目指す研究
原子番号119以上の元素をつくるには、加速器を使って原子核どうしを高速で衝突させ、合体する瞬間をとらえる必要があります。
ただし、原子番号が大きくなるほど原子核どうしは近づきにくくなり、合体に成功する確率もとても低くなります。
これは、原子核がプラスの電気を帯びており、互いに反発し合うためです。
さらに、たとえ合体しても、新しくできた重い原子核は短い時間で別の原子核へ変化することがあります。
そのため研究では、衝突させる原子核の組み合わせ、ビームの強さ、実験装置の感度などを細かく調整します。
| 研究で工夫される点 | 目指していること |
|---|---|
| 原子核の組み合わせを選ぶ | 合体しやすい条件を探す |
| 加速器で粒子を安定して加速する | ごくわずかな生成の機会を増やす |
| 生成物を選び分ける装置を使う | 多くの粒子の中から目的の原子核を見つける |
| 変化の記録を詳しく調べる | 新しい元素かどうかを慎重に確かめる |
日本でも、重い原子核をつくるための加速器や観測装置を活用し、119番元素をはじめとする超重元素の探索に取り組んでいます。
一度の実験で答えが出るとは限らないため、装置の改良や条件の見直しを重ねながら、長い時間をかけて研究が続けられています。
「つくれたかもしれない」という小さな手がかりを見逃さないことが、新元素探索では特に重要です。
新元素探索が原子核や周期表の理解につながる可能性
119番元素が確認されると、周期表では新しい周期の始まりに位置づくと考えられています。
周期表は元素を原子番号順に並べた表ですが、単なる一覧ではなく、元素の性質の似かよい方を読み取るための地図のようなものです。
そのため、119番以降の元素を調べることは、既存の周期表の考え方がどこまで成り立つのかを確かめる機会にもなります。
- 非常に重い原子核が、どのような条件で存在しやすくなるのかを考える手がかりになります。
- 原子核をまとめる力と、陽子どうしの反発のバランスを理解する研究につながります。
- 電子の動きによって、元素の性質がどのように変わるのかを予測する材料になります。
- 周期表のさらに先に、どのような元素の並びが広がるのかを考える助けになります。
特に研究者が関心を寄せているテーマの一つに、非常に重い原子核でも比較的長く存在できる領域があるのではないか、という考え方があります。
これは「安定の島」と呼ばれることがあり、特定の陽子数や中性子数の組み合わせで、原子核が保たれやすくなる可能性を探る研究です。
現時点では詳しいことが分かっていない部分も多いからこそ、実験と理論の両方から丁寧に調べる価値があります。
ニホニウムの誕生はゴールではなく、まだ見つかっていない元素へ向かう新たな出発点でもあります。
日本で続く新元素探索は、周期表の未来と、原子の世界への理解を少しずつ広げていく挑戦なのですね!
まとめ
- ニホニウムは、原子番号113・元素記号Nhの人工元素です。
- 自然界でまとまって見つかる元素ではなく、研究施設でつくられます。
- 発見したのは、理化学研究所の森田浩介氏を中心とする研究グループです。
- 原子核が変化していく「崩壊の連鎖」を調べ、113番元素であることが確認されました。
- 2015年に、日本の研究グループによる発見として国際的に認定されました。
- ニホニウムの名前は、日本を表す「Nihon(ニホン)」に由来しています。
- 日本とアジアの研究グループが初めて新元素の命名権を得た、画期的な出来事です。
- 詳しい性質や用途は研究段階で、119番以降の新元素探索も進められています。
ニホニウムは、普段の暮らしで目にする機会はほとんどない元素ですが、日本の研究者たちが長い時間をかけて積み重ねた挑戦の結晶です。
周期表にある一つの元素名の背景には、見えないほど小さな原子をとらえようとした工夫や、何度も確かめる丁寧な研究があります。
元素の話は難しそうに思えても、「なぜこの名前なの?」「どうやって見つけたの?」という身近な疑問から楽しめます!
ニホニウムをきっかけに、周期表やこれから発見されるかもしれない新元素にも、少し目を向けてみてくださいね。

